山下敦弘監督と愛すべき"クズ"

  クズ。
  ある男は日雇い労働をしながら人を妬み、風俗に通う。
  ある女は就活に失敗し、実家に引きこもり、父親の脛をかじる。

   クズ。
  そして、ある男は『古い日記』を歌う。

  これらのクズたちは山下敦弘監督作品の愛すべき主人公たちだ。『苦役列車』(2012)の日雇い労働者、貫多(森山未來)は親が性犯罪を犯し、中卒であることをコンプレックスに思う。そのため人を妬み、うまく関係が築けない。『もらとりあむタマ子』(2013)のタマ子(前田敦子)は、就活に失敗し大学卒業後、実家に引きこもり、現実逃避に少女漫画を読み更ける。このクズたちには向上心がない。「諦め」ているのである。

  貫多もタマ子もなんでこうなってしまっているのか自分の中に原因を見出している。だが、それの解決策は分からない。現状を打破できない。その苛立ちを友人や父親にぶつける。そしてやがて見放されていくのである。

  しかし、クズたちは腹を括っている。不安や苛立ちがありながらも周りに見放されながらもクズとして堂々と生きている。『味園ユニバース』(2015)のポチ男(渋谷すばる)の痛々しいまでのクズとしての生き様は清々しい。クズだって生きてていい。クズな日常も悪くはない。山下敦弘監督独特のクズの描き方は人間味があり、愛おしい。

  そして、そのクズの日常を映画館で観ることを勧めたい。あの少し緊張感のある暗闇の中で。映画を観ることしかできないあの空間で。自宅の手頃なサイズの画面で見るよりも彼ら彼女らの生き様はより一層残るであろう。特にポチ男の歌声は是非、劇場で体感して欲しい。



(冒頭、J-Stormの画面がデカデカと表示されますが、例のけたたましい音は入っていないので身構えなくて大丈夫です。元アラシックより。)